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新型コロナウイルス その32 マリス博士の遺言


 私たち生物の遺伝情報は、ゲノムと呼ばれる設計図の中に暗号化されて収められています。ゲノムDNAの最小単位は4種類の塩基(アデニン、チミン、グアニン、シトシン)と呼ばれる物質で、設計図の文字に相当します。この文字の数や並び方は、生物の種類ごとにだいたい決められているので、文字を読めばどの生物の設計図なのかわかります。ヒトでは31億文字、大腸菌では464万文字あり、生物種によって文字の数や並び方は異なります。文字の並び方は、「意味を持つ単語」として並んでいる部分と、意味を持たない単なる文字として並んでいる部分(いわゆるジャンクDNA)が入り混じっています。この「意味を持つ単語」に当たる部分が遺伝子です。微生物の種類によっては、「この菌は必ずこの遺伝子を持っている」とわかっている場合があります。その特徴を理解し、検出したい微生物が特有にもっている遺伝子をターゲットにして細菌やウイルスの検出を行う方法がPCR検査です。キャリー・バンクス・マリスは1944年12月28日、アメリカ合衆国ノースカロライナ州レノアで生まれました。ジョージア工科大学を卒業後、1973年にカリフォルニア大学バークレー校大学院で博士号を取得し、バイオテクノロジーのシータス社に就職しました。1983年、当時の同僚で交際相手のジェニファーを乗せてのドライブ中に、DNAの増幅方法のアイデアがマリスの頭に突然ひらめきました。車を路肩に止めて、この化学式を書き留めました。過去の論文を紐解いて、未発表とわかると、そのアイデアを同僚に話しましたが、誰も認めてくれませんでした。DNA二重らせんの2本鎖DNAを高温下で変性させ、1本鎖DNAに物理的に分離します。この1本鎖DNAを含む溶液を冷却してプライマー(オリゴヌクレオチド)を一本鎖DNAの相補配列部位に結合させることで2本鎖をつくらせます。この溶液を若干加熱して、この2本鎖DNAをテンプレートとしてDNAポリメラーゼを働かせることで、プライマーが結合した部分を起点として遊離ヌクレオチドを利用して1本鎖部分と相補的なDNAが酵素的に合成されます。このサイクルを繰り返すことで元のテンプレートが指数関数的に増幅され連鎖反応が進みます。12月16日この実験に成功し、有名な化学雑誌「Nature」や「Science」誌に投稿しましたが、採用されないどころか、会社でも相手にされず部署の配置換えを余儀なくされました。しかし、上司は彼にその実験を続けるように説得しました。1987年にやっと小雑誌「Methods in Enzymology」に投稿が許可されました。1993年にノーベル化学賞の受賞が決まり、ようやく日の目を見ることになりますが、その時彼はサーフィンをしていたと伝えられています。彼が有名なのはPCR検査だけではありません。エイズ否認論者でもありました。HIVウイルスの存在自体が証明されず、感染実験も成功していないため「コッホの4原則」に反すると述べています。PCR検査は犯罪捜査や出生前遺伝子診断などにも使われています。しかし、講演で繰り返しPCR検査を感染症の診断に使ってはならないと警告し、使い方によっては誰でも犯人にすることができると述べています。現在新型コロナウイルス感染症の犯人捜しをPCR検査で行っています。偶然か必然かわかりませんが、今回のコロナ騒動が起こる直前の昨年8月7日に自宅で、肺炎?で亡くなっています。マリス博士が生きていたら今回のコロナ騒動はなかったと思われます。現在、中国の武漢ウイルス研究所と「Nature」に論文を乗せた上海公衆衛生臨床センターは閉鎖されています。クルーズ船も去っていきました。収拾のつかなくなったPCR検査を、そろそろ見直す時期が来たのではないかと思います。


2020.8.25. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

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