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新型コロナウイルス その69 まさかの急変


 朝日新聞の朝刊に患者を生きる 新型コロナ」が連載されています。その4「まさかの急変」を紐解きます。首都圏に住んでいた85歳の男性が4月1日、PCR陽性と診断されました。4月10日、全身倦怠感 、発熱が出現しため入院しました。病院から迎えの車がやってきて、家族の付き添いもなく一人病院に運ばれていきました。路上で見送った長男に2時間後病院から電話がありました。「肺などの臓器、血液の状態が非常に悪い」と言われました。長男は「人工呼吸器をつけてほしい」と頼みました。しかし、病院側は「それは年齢的に難しい」と言いました。「何か変化があればこちらから連絡します」と言って電話を切りました。12日、看護師から生活用品を持ってきてほしいという連絡があり、長男は病院に向かいました。男性の熱は36度台に下がっていました。医師は「状態は良くなってきています」と長男に告げました。ところが翌13日のお昼、「悪化したのですぐ来てほしい」と医師から連絡がありました。駆け付けた長男は「何とか助けてください」と泣きながら、何度も医師に訴えました。病院は特別に、ガラス窓がある病室のドア越しでの面会を許可しました。3メートルほど離れた廊下から、長男がスマホで話しかけると、病室にいる看護師が男性の耳元に携帯電話を当ててくれました。「早く帰ってきてほしい。みんな待っているよ。大丈夫だよ。」 男性は腕を少し上げて小さく「おう」と答えました。これが最後の「会話」になりました。その翌日の午後4時過ぎ、病院から電話がありました。「亡くなりました」と一言、死因は肺炎でした。この掲載に2つの問題点が隠されています。1つは「コロナ患者の最後」、2つ目は題名にもある「まさかの急変」です。まず1つ目「コロナ患者の最後」です。私は開業するまで数々の救急現場で患者の死と向き合ってきました。飛び降り自殺、ガス爆発、子供の溺水、細菌性髄膜脳炎、心筋炎、服毒自殺、脳卒中、心筋梗塞、交通事故、吐血、下血、喀血、一命をとりとめて脳死状態で7年にわたって、妻が毎日看病していた男性もいました。肺気腫で10年にわたって、人工呼吸器をつけていた患者もいました。劇症型心筋炎でPCPS(ECMO)を着けた患者もいました。みんな亡くなってしまいましたが、最後は必ず肉親が手や顔を触って、見送りました。そのなかにはエイズ、C型肝炎、B型肝炎、破傷風、梅毒などの感染症を持った患者もたくさんいました。新型コロナウイルスの病原性はこれらの病気にくらべたらはるかに低いと考えられます。人は生まれる時も、死ぬ時もこれまで必ず、肌と肌を触れ合ってきました。アフリカで蔓延しているマラリアやエイズ、結核、エボラ出血熱、マールブルグ熱、ラッサ熱でもこんなことはありません。患者の家族は医師の言うことに従うしかありません。問題は医療者の側にあります。政府からこうしなさいと言われて、仕方なくやっているのかもしれませんが、私には理解不能です。自分の肉親だったらどうでしょうか。よく考えてみてください。2つ目は「まさかの急変」です。よく患者さんに、この熱がずっと続くことがあるのでしょうか、とか、この痛みが一生続くのでしょうか、などと聞かれることがあります。私はそんなことはありません、と答えています。外来に元気で歩いてきているわけですから、よくなるに決まっています。しかし、どんな病気でも、急変の可能性は常にあります。ただの風邪でも、85歳で免疫の落ちた男性が罹患すると、一晩待たずに肺炎で亡くなってしまうことは、それほど珍しいことではありません。新型コロナウイルスという病原体は見つかっていません。遺伝子の断片2個をPCRで増幅して数百万個にして検出しているだけです。病原性はただの風邪かそれ以下です。メディアでコロナ患者の「まさかの急変」という言葉の露出が多すぎます。


2020.12.3. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

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