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新型コロナウイルス その114 コロナ後 その3
8. GERD(胃食道逆流賞)の増加;よく外来に逆流性食道炎と言われて薬をもらっているという患者さんが来られますが、これは誤った認識か、あるいは診断したドクターがわかりやすく言っているだけで、私が外来で見る限り、そうそう逆流性食道炎はありません。年間500例程度の胃カメラを施行していますが、年に1人いるかいないかの確率です。ヒトの血液のPHは7.42で弱アルカリ性、胃酸は塩酸・硫酸と同じでPH1.0の強酸です。食道と胃の間にはEGjunctionがあり、LES(括約筋)で閉じています。通常、いくら食べても胃から食道に食べ物や胃酸が逆流することはありません。しかし、たまに食べ過ぎるとLESが緩み、胃酸が逆流します。これが、胸焼けやゲップ、嘔気、咳などの症状を起こします。LESが緩まなければ、胃の上部(噴門部)に亀裂が入り、表在血管が点状に出血します。これは胃痛の症状として現れ、AGML(急性胃粘膜病変)と言います。いずれにしても、食べ過ぎはよくありません。本題から少しずれましたが、テレビでよく聞く「逆流性食道炎」は、もともと急性の病気です。2週間もすれば治ってしまいます。PPI(タケキャブ、ネキシウムなど)を長期に飲んでいる人は、実は逆流性食道炎ではなく、GERD(胃食道逆流賞)あるいは食道裂孔ヘルニアです。これは、食道の生活習慣病です。コロナ禍で、外出を控え、テレワークが増えると、ついつい食べてしまいます。いつでも冷蔵庫を開けることができます。食べたらすぐに横になります。これは動物の本能で交感神経が休まるため、すぐに横になりたくなるのです。こんな生活を繰り返していると、どうしても胃酸が食道に流れ込んできます。逆流性食道炎までいかなくても、もともとアルカリ性だった食道下端が胃酸で過敏になります。これが逆流性食道炎様の症状を起こします。症状だけ出て、胃カメラで初見のない人もいます。予防としては、1日3度の食事以外に物を口に入れないこと、間食を控えることです。お茶やコーヒー、紅茶、アルコールはのんでもいいですが、食事の時に限ります。とにかく、食事と食事の間隔をあけることです。夕食後、ワインを飲みながら、寝るまでネットフリックスを見るなどは最悪です。よく、食事以外に2、000mlの水分が必要という脳外科医がいますが、これも全く必要ありません。ヒトは3度の食事で充分2、000mlの水分はとっています。四肢浮腫、肺水腫、右心負荷、低ナトリウム血症などの危険性の方が重大です。昨年夏に60代の男性が、熱中症の症状で受診しました。通常ヒトの血液中のNaの濃度は135〜145mEq/Lです。その男性はNaの血中濃度が129mEq/Lでした。わかりやすく言うと1日2,000〜3,000mlの水を何年も飲み続け、低ナトリウム血症になっていたのです。頭痛、嘔気、けいれんなどの症状は熱中症と全く同じです。認知症の老人介護病棟では、これを防ぐために、水分制限の工夫をします。テーブルの上に水を置いていると、無意識にいくらでも飲んでしまいます。そして、もっと欲しがります。そのため、小さな角氷を午前と午後にコップに5、6個入れておきます。つまり喉が渇く時には氷をなめさせるのです。たとえ気管に入っても水ですので、誤嚥の心配はありません。ゴルフ場でも2,000mlの大きなペットボトルをもって回っている人がいますが、私はひやひやしながら見ています。
2026.5.11. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友
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