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新型コロナウイルス その21 ECMO


 日本救急医学会専門医のいる600施設で、日本COVID−19対策ECMOnetが、COVID−19重症患者状況の集計を行いました。日本全体のICUベッド数は6500床ですが、この統計には約5500床、80%が含まれています。6月30日現在、ECMO離脱例120例、死亡例44例、ECMO使用中が9例です。東京都内で使用している例は1例です。ECMO以外の人工呼吸器を使った患者は、軽快360例、死亡例127例、人工呼吸器実施中が28例です。いずれにしても、重症化例で約70%が改善しています。2009年の新型インフルエンザの時のECMO使用例の36%が死亡した時とは、明らかに技術が進歩しています。また、ニューヨーク市の人工呼吸器を使用した症例の死亡率が89%であることを考えると、日本の救命救急の技術の高さがうかがえます。福岡大学病院は7月1日から「エクモセンター」を日本ではじめて稼働することを、本日発表しました。そもそも、エクモとは膜型人工心肺装置とも言われていますが、通常の人工呼吸器とは違います。通常の人工呼吸器は、肺炎などで低酸素血症におちいった時、気管支末端の肺胞で酸素の換気がうまくできなくなります。そこで、酸素を送り、強制的に圧をかけて換気を促す治療です。そのため、肺胞がある程度機能し、残気量が十分あることが条件です。肺炎が重症化し、肺胞の残気量がまったくなくなってしまうと、ガス交換ができず、心肺停止状態になります。ここで、エクモが登場します。肺胞の感染がおさまるまで、代わりに全身に血液=酸素を送る役割をします。重症化した糖尿病患者にインシュリンを投与し、膵臓の機能が回復するのを待つのと同じ理屈です。エクモとはextra corporeal membrane oxygenerationの略で体外式膜型人工肺と呼ばれています。日本には1400台ほどありますが、元々は心臓外科などの手術の時に、一時的に心臓と肺の機能を代行するために生まれた装置です。1953年、アメリカ、ジェファーソン大学の心臓外科医、ジョン・ヘイシャム・ギボンが最初に使って成功しました。日本では長い間、PCPS(Percutaneous Cardio Pulmonary Support:経皮的心肺補助装置)と呼ばれてきました。その名の通り大腿動静脈から送血管と脱血管のカニューレを挿入します。血液は遠心ポンプから人工肺でO2ガスが加えられ、大腿動脈→腹部大動脈→胸部大動脈へと逆走します。そのため、PCPSが使用される多くの患者で多少でも自己心が動いている場合は、順行性に上行大動脈→全身へと血液が送られ、自己心由来の血液とPCPS由来の血液が腎動脈分岐付近でぶつかってしまい、非生理的な血行動態となります。重症心不全に対して適応されますが、左室の負荷を軽減できないことが決定的な弱点です。また。PCPS装着の遅延により心肺機能が回復しても多臓器に影響を残すことになるため、厳格な適応基準が設けられています。1.体外循環器離脱困難症 2.術後低心拍出量症候群(LOS) 難治性不整脈を含む 3.急性心筋梗塞後心源性ショック 4.心筋炎による低心拍出量症候群 5.重症冠動脈疾患症例のPTCA(経皮的冠動脈形成術)施行時 6.呼吸不全にたいするECMO 等です。このようにPCPSの9割が心血管系の疾患に使用されます。私は約20年、救急医療にたずさわってきましたが、ECMOを使ったのはほんの数例にすぎません。ECMOは救急医が誰でも使えるわけではありません。今後、COVD−19の第2波に備えては、ECMOセンターを通しての人材の確保が大切になると考えられます。


2020.7.1. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

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