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新型コロナウイルス その22 抗体


 6月19日、NHK NEWS WEBでも配信されましたが、新型コロナウイルスに感染した後に体内で作られる抗体が、感染から数か月後に減り始めたという報告は衝撃的でした。今後、開発が進みワクチンができたとしても、破傷風やポリオのようにワクチンを打っても、その抗体が終生免疫にはなりえないというお話です。中国の重慶医科大学の研究グループが「Nature Medicine」に発表しました。今年4月上旬までに重慶で新型コロナウイルスに感染して症状が出なかった8歳から75歳までの男女の患者37人と、症状が出た37人について抗体の量の変化を比較しています。感染後2週間ほどして作られる「IgG抗体」が、最初80%以上で検出されました。退院から2カ月後にこの抗体の量が、無症状者で93.3%、有症状者で96.8%減少したことがわかりました。減少した割合は、半数の人で70%を超えていていたこともわかりました。また、ウイルスの働きを抑える「中和抗体」の量は無症状者で81.1%、有症状者で62.2%減少していました。同様の報告が7月6日、スペイン保険省からも出されました。スペイン人約7万人を対象に、3か月にわたり3回の抗体検査を行いました。1回目の検査で陽性だった被検者の14%が、3回目の検査で陰性だったこと、最終的に抗体を保有している人は、被検者の5%だったことを報告しています。これは、一定率以上の人が感染すれば、それ以上感染が拡大しないという集団免疫が、新型コロナウイルスでは成立しないということを意味します。そもそも、免疫は自然免疫と獲得免役の2段構えでできています。自然免疫は生れた時からそなわっているものです。皮膚や粘膜にもともとバリアーがありますが、細菌やウイルスにそのバリアーが突破されても、続いて白血球の一種である食細胞がそれらを食べてくれます。食細胞は全身に分布し、絶えず異物の侵入を見張っています。抗体を持たなくても、自然免疫が強ければ、これだけで新型コロナウイルスを撃退できる人もいます。自然免疫でウイルスを排除できなければ、獲得免役の出番です。感染から数日して最初に刺激されるのが、ヘルパーTリンパ球で、司令塔の役目をします。Bリンパ球に指令をだすと、Bリンパ球は抗体を作ります。同時に、キラーTリンパ球に指令を出すと、キラーTリンパ球はウイルスに感染した細胞を殺します。大事なのは、抗体はウイルスを殺しても、ウイルスに感染した細胞を殺すことはできません。抗体は大きなタンパク質なので、細胞の中に入っていけないからです。キラーTリンパ球だけが感染細胞を殺すことができるのです。武漢医科大学で感染者の血液を調べたところ、感染者のうち無症状の人は抗体量が少なく、重症者は発症後何日たっても、無症状、軽症者より抗体の量が多い、一見矛盾する傾向が見られました。これは抗体にも役に立つ抗体とそうでない抗体があることを意味しています。新型コロナウイルスの抗体の保有率だけを調べても意味がないことがだんだんわかってきました。破傷風やポリオなどはワクチンを一度打てば免疫が数十年つづきますが、インフルエンザは3カ月程度しか続きません。新型コロナウイルスの抗体は約半年程度と考えられます。ワクチンができたとしても、インフルエンザと同様に有効期間はかなり短いものになると考えられます。今のところ、各自で免疫、特に自然免疫を強くするしかありません。特に免疫と体内時計は密接につながっています。昼間は免疫が増強し、夜間は弱くなります。朝日を浴びて、昼間に適度な運動をし、夜間は十分な睡眠をとって、規則正しい生活を送り、毎日の習慣を変えず、酒、たばこを控え、体内時計が狂わないようにすることが重要です。


2020.7.7. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

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