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脱炭素狂騒曲 その13 ビニールハウス


 イギリスの物理学者、ジョン・チンダルは、水蒸気H2O、二酸化炭素CO2、メタンCH4などの気体が、赤外線を吸収できることを発見しました。このような赤外線を吸収することのできる気体を、一般に「温室効果ガス」と呼びます。これらの温室効果ガスは、地球表面から放射される赤外線は吸収しますが、太陽から放射される可視光線は吸収しにくいという性質があります。18世紀後半の産業革命以降、大気中のCO2の濃度は、化石燃料の消費、森林伐採などによる土地利用の変化、航空機の発達に伴う排気などにより急速に増加しました。産業革命以前は280ppmという値でしたが、現在では415ppm(2021年)にまで増えています。産業革命以前に比べて、約48%も増加していることになり、氷河コアの分析を通して明らかになった、過去65万年間のCO2の自然変動の範囲とされる180〜300ppmを大幅に上回っています。地球の気候の駆動源は太陽エネルギーであり、太陽から届いたエネルギーのうち、約3割は雲や地表面で反射され、残りの7割が地球を暖めています。「温室効果」は、CO2やCH4などの温室効果ガスが、地表面から出た熱赤外線を吸収するために起こります。本来、地表面付近の熱は、宇宙空間に向かって熱赤外線の形で放熱されていますが、温室効果ガスは熱赤外線を吸収することにより、熱が逃げるルートを効率よく塞いでいるのです。この温室効果は33℃ほどであると考えらえています。現在の地表平均気温が15℃なので、温室効果が全くない場合の予想気温は−18℃になります。地球環境の目の敵にされることの多いCO2ですが、これがないと、地球はひどく寒冷な気候に置かれることになります。もし地球の大気からCO2が失われたら、地球の表面は完全に凍り付き、高等な生物は存在することが不可能になります。今から8000万年前の白亜紀のCO2濃度は少なくとも0.1%(1000ppm)以上あり、氷床は融け、地球表面の気温は現在よりも10〜15℃高く、大地は緑で覆われていたと考えられています。米カーネギー研究所地球生態部の気候学者、ケン・カルデイラは、「CO2濃度が現在の2倍になっても、地球が外部に放射するエネルギーの2%も補足しない」と指摘しています。温室効果ガスとして、CO2はあまり効率が良くないのです。さらに、大気中のCO2には経済学でいう「収穫逓減の法則」が働きます。つまり、大気中のCO2が10憶トン増えても、以前に増えた10億トンほどには、地球温暖化に影響を与えないということです。また、CO2濃度の増加が植物にあたえる影響を調べた研究によると、CO2濃度の増加は、全体とし植物に良い影響を与えることがわかっています。植物は空気中からCO2を集めて光合成をおこなっていますが、単純にCO2濃度を2倍にすると、植物の成長は70%高まります。商業用の水栽培の温室でCO2濃度を高くしているのはこのためです。そういう温室では、CO2濃度は0.14%(1,400ppm)程度の濃度になっています。植物にとっては、CO2は現在の濃度0.0415%(415ppm)よりも高いほうがいいのです。脱炭素政策のために、ビニールハウスでわざわざ石油を燃やしています。本末転倒です。

 


2023.9.14. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

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