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脱炭素狂騒曲 その52 欧州の熱波


 ヨーロッパでは6月下旬、各地で観測史上まれにみる暑さとなっています。6月24日はフランスでの平均気温が観測史上最も高くなりました。南部ピソスでは44.5度を観測しました。世界中が脱炭素化に向けて再生可能エネルギーにシフトしています。特にフランスは原子力発電依存度が、発電電力量の約67〜75%を占めており、世界で最も原子力への依存度が高い国です。フランスで稼働している商業用の原子炉は57基です。アメリカの93基に次いで世界第2位の保有数を誇ります。それなのに、ヨーロッパで一番暑い国となっています。皆さん、不思議に思いませんか。これにはテレビで放送できない深いわけがあります。原発はCO2を出しませんが、1、プラントの建設(建屋・炉の製造);膨大な量のコンクリート、鉄鋼、セメント、銅などを使用します。これらの資材製造や重機の稼働、輸送に大量の化石燃料(石油・石炭)が使われます。巨大なコンクリート製の格納容器や特殊鋼鉄の原子炉、ウラン燃料の採掘・濃縮プロセスの段階で多くの化石燃料(エネルギー)を消費します。2、ウラン燃料の採掘と濃縮;ウラン鉱石を掘り出し、発電に使えるように「濃縮」する工程は非常に電力を消費します。この電力の多くが、現地の化石燃料(火力発電)によって使われています。3、廃炉と廃棄物処分;運転終了後の解体工事や、使用済み燃料の埋設処分地の建設、長期間の管理にも一定の重機燃料や電気エネルギーが必要です。わかりやすく言うと、原子力発電所(原子炉)の建設や燃料製造には、100万kW規模のプラント(一般的な原発1基)あたり、石油換算で約10〜20万トンの化石資源が必要になります。フランスの原子炉は、海に囲まれた日本とは異なり、大量の冷却水を確保するため、国内の大河(ローヌ川やロワール川など)の河畔に建設されています。処理された汚染水は長い時間をかけて、海に流れていきます。当然水温は上昇します。100万kW級の原発1基が1年間運転すると、火力発電と比べて約300〜500万トンのCO2を削減できます。しかし、フランスの世帯数は約3,130〜3,240万世帯です。冬場の暖房はやはり、ガス暖房、灯油・重油暖房を使います。平均すると自動車による移動や食品、日用品の消費などを含めた「生活全体の炭素足跡(カーボンファットプリント)として換算した場合は1人当たり年間8.5トン(2〜3人世帯なら17〜25トン)になります。フランスの1年間のCO2の実質排出量は約3,200×20=64,000万トン。重工業・製造業の排出量は年間約7,500万トンですので、合わせると,71,500万トンになります。結局、原発を57基使ってもCO2は減るどころか、増えてしまいます。正常な原発の「一次冷却水」の温度は約280〜325度です。通常の気圧下では100度で沸騰していますが、原子炉の内部は約70〜160気圧という凄まじい高圧がかけられています。300度近い高温になっても気化(沸騰)せず液体の「水」のまま存在しています(100度以上にならない)。タービンを回した後の蒸気を冷やすために、原発は海や大河から大量の水を取り込んでいます。(二次・三次冷却水)。この水は原子炉内の汚染された水とは一切接触しないため、放射性物質は含まれていませんが、熱だけを奪って自然界に戻されるため、元の河川の水温より7〜10度ほど高くなります。当然その周囲の土地の温度も上昇します。フランスはさらに8基の原発追加建設を検討しています。欧州の熱波はまだまだ続くでしょう。

 


2026.7.7. 氷川台内科クリニック 院長 櫻田 二友

 

 

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